「理事のお天気だより」 バヌアツ編(その1)
「監事」を務めさせていただいております、登内(とのうち)です。
今回の「お天気だより」では、太平洋の島国「バヌアツ」気象局の様子を、お届けします。
バヌアツは、太平洋の島国で、オーストラリアの北東、フランス領ニューカレドニアの隣に位置します。もともと、フランスとイギリスの共同統治領だったため、皆さん、英語の少し変化したビスラマ語を話しますが、英語とフランス語を話す人も多く、オーストラリア・ニュージーランドなどからの観光が主な産業で、南北800kmにわたって連なる83の島(Wikipediaより)からなる国です。
バヌアツの位置
きれいな海、多くの森、鳥、活火山など、豊富な自然に恵まれた国ですが、国連大学がまとめる「WorldRiskIndex」では、調査対象181か国(2021年版)のうち、もっとも災害リスクの高い国とされています。バヌアツは、2015年にサイクロンパムで大きな被害を受けたほか、北部のアンバエ島では、2017年に火山噴火による全島避難があり、ニューカレドニアとの間に走る断層を中心に地震発生も多く、たびたび津波にも襲われます。
自動情報端末による新聞の天気予報
日本と同様に、地震・津波・台風・火山により頻繁に被害を受けるバヌアツで、日本の防災情報発信の経験を生かしていただくことを目的に、地震・津波・高潮のための観測・情報能力強化のプロジェクトが2019年から実施されています。
バヌアツ気象地象局VMGD(Vanuatu Meteorology and Geo-hazards Department)には、オーストラリア、ニュージーランド、フランスなど多くの国の支援が入っています。大洋州の島国でもっとも重要な、気象衛星の受信・監視システムは日本から供与され、サイクロンや大雨を監視するとともに、日本の気象庁の衛星監視・解析ソフトSATAIDにより天気図解析を行い、気象局のホームページで公開しているほか、フランスMFI(Meteo France International)の気象情報端末を使って、TV・新聞社などへの情報提供を行っています。
SMSによる警報送信画面
また、サイクロンにより大きな被害を受けた経験から、VMGDが携帯電話会社を経由して、全利用者にSMS(ショートメッセージ)で警報を送信する仕組みが整備されています。VMGDからフリーフォーマットで情報を入力し、携帯電話会社担当者に原稿を送信、携帯電話会社担当者が、原稿を修正(字数制限やより分かりやすい情報にする)し、全利用者に発信し、サイクロン情報が送られます。なお、津波についても、SMSでの発信が行える仕組みが出来ていますが、まだ発信された実績はありません。
(「その2」へつづく)
担当:登内道彦(監事)